Haemophilus influenzae はグラム陰性小桿菌で、気管支炎や肺炎を起こす

内科・感染症
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

直上の写真は、喀痰グラム染色。多核白血球の間に、小さなグラム陰性桿菌が見えるでしょうか。

Wikipediaより引用。編集して記載。

インフルエンザ菌(インフルエンザ桿菌、Haemophilus influenzae)は、パスツレラ科ヘモフィルス属のグラム陰性短桿菌で、呼吸器や中耳に感染を起こす。

莢膜の血清型がb型の細菌を、Haemophilus influenzae type b (Hib)と呼ぶ。

歴史的な理由により「インフルエンザ」という名称が付けられてはいるが、ウイルス感染であるインフルエンザの病原体ではなく、誤って同定されたことに由来する。

1890年代のインフルエンザの大流行の際に、原因菌として分離されたため「インフルエンザ」菌という名称が付けられた。その後インフルエンザの原因としては否定されたが、名称だけが残った。

細菌学的特徴

ヘモフィルス属のグラム陰性桿菌である。フィラメント状(長い形)や球菌状の形態を呈する多形性という性質がある。発育因子としてX因子(ヘミン)とV因子(NAD)の両方を必要とする。ヘミン(hemin)を要求することは属名 (Haemophilus) の由来ともなっている。

菌の分離には、通常、ブレインハートインフュージョン等の培地にヘミンとNAD、または羊脱線維血液を加えて培養する。

生物型ではI – VII型までの8つに分類され、このうちII型とIII型は莢膜を持たない。莢膜の血清型はa – fの6型に分けられる。血清型bの莢膜の構成成分である莢膜多糖体抗原 (phosphoribosylribotol phosphate) は病原因子として重要である。小児の髄膜炎などを起こす。

非莢膜株(前述のa-f型以外の型)は、従来の血清型に分類できないという意味でnon-typable (NT) 株と呼ばれる。これに学名Haemophilus influenzaeの頭文字を略した”Hi”をつけて、b型菌を Hib、非莢膜株をNTHiなどと略す。

細菌の病原性

病原性は前述の莢膜株と非莢膜株とで大きく異なる。

非莢膜株は健康なヒト、特に乳幼児の上気道(咽頭、鼻腔)に常在している。感染症は、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの気道感染症が多い。小児では気道感染症の3大起炎菌のひとつ(その他は、肺炎球菌Streptococcus pneumoniae、Moraxella catarrhalis)である。

莢膜株も上気道に保菌があるが、気道感染症を起こすことは少なく、直接血流中に侵入して感染症を起こすものがある=侵襲性感染症。莢膜株の感染症ではほとんどがHibで、敗血症、髄膜炎、結膜炎、急性喉頭蓋炎、関節炎などを起こす。b型以外の莢膜株が人に感染症を起こすことは稀で、近年、Hibに対するワクチンの普及によりb型以外の感染症が増加している。

薬剤耐性

特徴的に、以下の薬剤耐性に分類される。
1. βラクタマーゼ産生による耐性菌 beta-lactamase positive ampicillin resistance Haemophilus influenzae (BLPAR Hi)

2. βラクタマーゼ非産生による耐性菌 beta-lactamase negative ampicillin resistance Haemophilus influenzae (BLNAR Hi)

3. βラクタマーゼを産生するが、薬剤のβラクタマーゼ阻害薬(クラブラン酸)に耐性の菌 β-lactamase positive ampicillin-clavulanate resistant (BLPACR)

BLNARが報告されたのは1980年

2004年の報告(北里大学)によると、検出されたインフルエンザ菌のうち21.3%がBLNARであった。2007年の報告(長崎大学)では、19.5%がBLNARであった。検出されるHiの, 約20%がBLNARである。

BLNARの耐性機構としては、ペニシリン結合タンパク質であるPBP-3(ftsI遺伝子)の変異が報告されている。BLNARのftsIによる変異については、生方らは3グループ(グループI、II、III)、Dabernetらは6グループ(I、IIa、IIb、IIc、IId、III)に分類した。BLNARに対する治療薬は、βラクタマーゼ阻害薬配合剤は効果が低いため、第3世代セフェロスポリン系薬が選択される。その他キノロン薬がある(結核を疑う症例には注意を要する)。

Hibに対するワクチン


b型菌の莢膜多糖体抗原を輸送蛋白に結合させたワクチンは、b型菌(Hib)による重症感染症(Hib感染症)の予防に有効である。世界100カ国以上でこのHibワクチンは導入されており、導入された国では Hib による髄膜炎、喉頭蓋炎がほぼ消失した。日本では2008年12月より任意接種、2013年4月より予防接種法による定期接種の対象となった。その結果、小児のHib髄膜炎発症は激減した。

接種年齢は、2か月齢以上になれば受けられる。望ましい接種スケジュールは、初回免疫として生後2か月から7か月になるまでに接種を開始し、4 – 8週間間隔で3回、追加免疫として3回目接種から1年後に1回の合計4回接種する。合計4回接種を受けた人のほぼ100%に抗体(免疫)が出来るため最適な予防接種プランとされている。外国では三種混合と同時接種スケジュールが組まれ、定期予防接種に認定されている。

写真:左は血液寒天培地。右はチョコレート培地(赤血球を溶血させた培地)。Haemophilus influenzaeは溶血した赤血球のヘミンを利用するため、チョコレート培地のみに発育である。

トップに掲載した写真は喀痰のグラム染色中に認められたグラム陽性双球菌。培養は肺炎球菌であった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました