腕からの採血はどの血管から行いますか?

採血

質問

普段の採血で、どの静脈から採血を実施していますか?

回答

腕の採血は、原則として肘関節付近の正中皮静脈や橈側皮静脈から行われる。

図ミギ腕肘～前腕の静脈の走行

図ミギ腕肘～前腕の静脈の走行. 断面図（ミギ腕断面を足方向から見る）

安全な採血手技の習得
厚生労働省が公開している臨床研修指導ガイドライン、研修④ 臨床手技では、学修目標として、「静脈採血を実施できること」と記載されている。初期研修医は臨床研修中に採血手技を習得することが達成目標となっている。

安全な採血部位
採血する部位は、安全に確実に血液をとるために、次のような点を考慮して選定される。

痛みが少ない場所
神経とはなれたところにある血管
採血時によく見えてしっかり太い血管である
皮下脂肪が多く、筋肉が少ないので柔らかく刺しやすい
これらを満たすのが、肘正中皮静脈median cubital veinや橈側皮静脈cephalic veinであり、望ましい理由としては、以下の点がある。
A. 肘関節は着衣の着脱を行わなくても容易に露出できる部位である
B. 血管自体が太くて穿刺し易い
C. 血管が動きにくい

注意点
　肘正中皮静脈・尺側皮静脈付近を正中神経が走行している場合があり，神経損傷のリスクに注意しなければならない．
正中神経は腕神経叢を出た後、上腕骨に沿って走行し、前腕では橈骨と尺骨の間を走行する。肘正中皮静脈は前腕のほぼ中央を縦に走行している。前腕内側の遠位部分で橈側皮静脈から分岐し、肘関節内側の下方で正中を横切り尺側皮静脈と繋がる．
また，肘窩部の尺側皮静脈付近は上腕動脈の誤った穿刺に注意が必要である
一方、肘付近の尺側皮静脈は動脈や神経と並走しているので、肘正中皮静脈や橈側皮静脈に採血に適切な血管が確認できればそちらを選択する。つまり尺側皮静脈は採血には比較的適さない。　
また、点滴投与中の腕で採血を行う場合は、点滴ルート内の輸液成分が流れ込む可能性があるため避ける．

最後に
臨床において患者の病状を評価するために、血液検査は欠かせない。安全な部位から医師が「静脈採血を実施できる」ことは「安全な部位から血液培養を採取できる」につながる。鼠経部からの血液培養採取は、コンタミネーションが多いことから推奨されず、腕からの血液培養採取を心掛ける。