
写真はタカネグンナイフウロ(高嶺郡内風露)。
花の情報は、白馬五竜高山植物園。こちら。この種は本州中部の亜高山帯から高山帯にかけて分布し、明るい草地に生育する。高さは30~50 cmで、紫色の花を数輪つける。花期は7~8月。
はじめに
細菌の学名は、国際命名規約によりラテン語(またはラテン語化されたギリシャ語など)で表記することが義務付けられている。属名と種小名を組み合わせた「二名法」で命名され、形、由来、発見者、地名などに由来する語源が文法的に正しく割り当てられている。
細菌のラテン語命名には、明確なルールと特徴がある。
●属名と種小名:属名(例: Staphylococcus)の後に、種小名(例: aureus)を続ける。
●イタリック体の使用:学名はラテン語であることを示すため、テキスト中では原則として斜体(イタリック)で表記する。
●大文字と小文字:属名の頭文字は大文字、種小名の頭文字は小文字で始めます。
●属名の由来(形態など):Bacillus(バシラス属):「短い棒」を意味するラテン語に由来する。Lactobacillus(ラクトバチラス属):「乳」を意味する lacto- と「短い棒」の -bacillus を組み合わせた造語である。
●種小名の由来(特徴や由来場所など)
coli(大腸菌 Escherichia coli など):ラテン語で「大腸」を意味する colon の属格(~の、の意味)である。
aureus(黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus):ラテン語で「金色の」を意味する形容詞で、コロニーが黄色いことに由来する。
細菌の学名はラテン語とラテン語化されたギリシャ語から構成される
ラテン語ではすべての名詞に「文法上の性(grammatical gender)」があり、形容詞はその名詞の性・数・格に一致するという規則がある。この「性」は生物学的な雄・雌とは無関係で、あくまで文法上の分類である。
細菌の学名は「ラテン語」と「古代ギリシャ語」が混在しており、最終的にラテン語化(Latinization)された形で命名されている。
属名のルール
一つの名詞として作られる。
属名自体は一つの名詞なので、後から語尾が変化することはない。(分類学的に別の属へ移されない限り、属名そのもののつづりは変化しない)
国際原核生物命名規約(ICNP)では、属名は単数・主格(~は、に当たる)のラテン語名詞、またはラテン語化された名詞である。
ラテン語、ギリシャ語、人名、地名、性質、形態など何を語源にしても構わないが、最終的にはラテン語の名詞として成立させる必要がある。
属名の決定
主に以下の5つのパターンがある。
1. 形態(最も古典的)
2. 性質・色
3. 性質・生理学
4. 人名
5. 地名
種小名のルール
細菌学で種小名の語尾が異なる理由は、種小名の文法的性質によって決まる。
形容詞:属名の性(男性・女性・中性)に一致して語尾が変化する。
属格名詞(〜の):主に「所有(〜の)」や「所属」を表す。属名の性に関係なく一定であり、語尾は変化しない。
名詞の同格:基本的に語尾は変化しない。
感染症・臨床細菌学でよく見られる種小名のパターン
臨床微生物学でみられる菌種の種小名は、大きく次のように分類される。
| 文法形式 | 役割 | 例 |
| 形容詞 | 性質・色・形態・環境 | Staphylococcus aureus(金色の)、 Enterococcus faecalis(糞便に関する) |
| 属格名詞 | 由来・宿主・部位・人名 | Globicatella sanguinis(血液の)、 Staphylococcus hominis(ヒトの) |
| 名詞の同格 | 生態や役割を名詞として表す | Aerococcus sanguinicola(血液に住む者)、Aerococcus urinae(尿という名詞を用いた命名) |
細菌を命名した者は「その細菌の色や性質を表したい」「細菌の由来を示したい」「細菌の生態や役割を表現したい」に応じて、種小名を形容詞、属格名詞、名詞の同格を使い分ける。これはラテン語の文法を活用して、菌の特徴を学名へ反映させるための伝統的な命名法である。
植物の命名法も同様である。
冒頭のタカネグンナイフウロ(高嶺郡内風露)は、フウロソウ科フウロソウ属の多年草。高山植物の一種である。
学名はGeranium eriostemon Fisch. var. reinii (Franch. et Savat.) Maxim. f. onoei (Franch. et Savat.) Hara, 和名はタカネグンナイフウロである。植物の学名において、命名者名に括弧 ( ) が付いている場合、これは「最初にその学名(または学名の基となった名前)を提出した人物(原著者)」を示している。そして、括弧の外にある名前は「その学名を別の属や階級に組み替えた人物(組替著者)」を示す。
原記載: フランシェとサバティエ(Franch. et Savat.)が、もともと別の階級や学名(例: Geranium onoei など)として記載・命名した。
階級の変更: その後、マキシモヴィッチ(Maxim.)が変種へ、原寛(Hara)が品種(または現在の学名体系)へと分類階級を再整理(組み替え)した。
この歴史的経緯と学名の根拠(タイプの提示)を示すため、国際植物命名規約(ICN)では「最初に種小名や変種名などを命名した原著者を括弧内に残す」ことがルールづけられている。
属名の「Geranium」は、ギリシャ語で「鶴」を意味する「geranos」に由来する。実の形が鶴のくちばしに似ていることから名付けられた。
Geranium = 中性名詞(第2変化)。-umが中性名詞の特徴。意味はギリシャ語の中性名詞 geranion(鶴のくちばし、フウロソウ)をそのままラテン語化したもので、語尾が -um で終わる第2変化中性名詞に分類される。
eriostemon = ギリシャ語複合語(-stemon)による同格名詞/第3変化相当の形容詞(第一変化ではない)。名詞の同格であり、語尾は変化しない。意味はギリシャ語の erion(羊毛:中性名詞)+ stemon(雄しべ:男性名詞)が合体してできたギリシャ語由来の複合語である。学名での扱い: 国際植物命名規約(ICN)上、こうしたギリシャ語由来の複合語は「属名の性(中性)に合わせて語尾を変化させない(不変の同格名詞、または第3変化相当の形容詞)」としてそのまま置かれるのが通例である。
フウロソウ属。Wikipediaの情報、 こちら。
フウロソウ属(フウロソウぞく(風露草属)、学名 Geranium)は、フウロソウ科に分類される多年生草本植物の属の名称で、420種以上が確認されている。
フウロソウ属の学名は Geranium だが、日本で園芸用に栽培される品種などで「ゼラニウム」と呼ばれる品種はテンジクアオイ属であることが多く、本属の種は多くが○○風露(フウロ)と呼ばれている。英名では本属とテンジクアオイ属をあわせて “Geranium” と呼ぶ場合が多い。

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