写真は腸チフスのメアリー。東邦微生物研究所 こちら
メアリー・マローン(Mary Mallon、1869年 – 1938年)
世界で初めて発見されたチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)の健康保菌者、すなわち、発病はしていないけれど病原体に感染していて感染源となった。
アイルランド系アメリカ人で、1900年代初めにニューヨーク市周辺で発生した腸チフス(Typhoid fever)の感染源となり、当時「腸チフスのメアリー」と呼ばれていた。
メアリーは、14歳のときに単身でニューヨークへ移住し家事使用人として働いていた。
1900年頃には、料理の才能と人柄の良さが信頼を集めて、住み込み料理人として富豪宅に雇われ、普通の使用人より高報酬を得ていた。
しかし、チフス菌のキャリアであり、メアリーが感染源となって、関係する人々は腸チフスを発症した。
自験例を提示する。
症例
75歳男性。発熱、下痢があり、外来を受診した。受診時に採取された血液培養および便培養からサルモネラ菌、Salmonella O-7 groupが検出された。
質問
1)本菌は「サルモネラ菌」であるが、非チフス性サルモネラで良いか。
2) 大腸菌Escherichia coliなどと異なり、なぜSalmonella O-7 groupという菌群名で報告されるのか。
解答
1) 本例は非チフス性サルモネラによる感染性腸炎および菌血症である。
2) 細菌検査報告書はサルモネラ菌と同定したのち、O抗原分類を用いて報告しているからである。
写真は非チフス性サルモネラ感染性腸炎の便グラム染色。非チフス性サルモネラ菌は腸内細菌科グラム陰性桿菌に分類され、グラム染色だけでは区別はつかない。便グラム染色には多核白血球を多数認める。
写真は血液寒天培地で増菌した非チフス性サルモネラのコロニー
質問に対する解説
培養から検出されたサルモネラSalmonella O-7 group (O-7群)は、Salmonella enterica subsp. enterica Salmonella serovar Choleraesuisなどが推測される。
得られた菌は、オートクレーブ121℃、20~30 分加熱後、加熱し死菌化させている(後述のごとく、チフス菌・パラチフス菌に存在するVi抗原は加熱により血清凝集しなくなる)。
得られた細菌菌体を質量分析器で菌種名を推定すると同時に、菌体をサルモネラ免疫血清検査法で抗原(O抗原群)反応させて菌種群同定を行っている。
多価血清で2つのO抗原群検査(O多価血清とO1多価血清)の試薬検査を用いた結果、非チフス性サルモネラO7群と診断した。
腸チフスの原因であるチフス菌(Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi, S. Typhi)はサルモネラO9群,パラチフスの原因であるパラチフスA菌(Salmonella enterica subspecies enterica serovar Paratyphi A; S. Paratyphi A)はサルモネラO2群に属する。
サルモネラチフス菌、パラチフス菌などとの鑑別は、Vi抗原は易熱性抗原を利用して、オートクレーブ処理後加熱死菌がVi血清に凝集しなくなることを確認できる。稀にVi抗原を持たない株があることに注意する。
亜種分類および血清型検査
亜種および血清型serovar については、ルーチンで検査を行っていないが、O抗原群の菌からserovar Choleraesuisと推測される。しかし日常診療においてはチフス・パラチフス性サルモネラか否かが重要であり、亜種分類、血清型serovar検査まで行う意義は低い。
概論
細菌の分類はその形態や生理・生化学的性状から分類されてきた歴史がある。近年の分子 生物学,遺伝学の導入により、核酸やタンパク質といった高分子情報から分類されるようになった。しかし菌の分類(血清学的分類)では2,500亜種あるとされ、日常臨床においては、簡便な血清分類(後述のO抗原による分類)が簡便であり、汎用される。
サルモネラ菌は医学的に重要な病原菌である。その病原性の面から本菌はヒトにチフス症状を起こすチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi & Salmonella enterica serovar Paratyphi)と下痢を起こす非チフス性胃腸炎(Non-typhoidal Salmonella)に大別される。
サルモネラ菌とは
サルモネラ菌はグラム陰性桿菌、非芽胞形成性で運動性がある。
サルモネラは細菌菌体抗原(O 抗原)以外に、その他Vi 抗原と呼ばれる莢膜を持ち、食細胞内や血清成分に抵抗性がある。本菌を分類上まとめると、
形態学的にグラム陰性、無芽胞(芽胞を形成しない)桿菌
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する
生理・生化学的分類:周毛性の鞭毛を有し運動性を示す
大腸菌のO抗原とは O-157を例に記載する。東海大学社会教育センター:こちら
O-157の「O」は「曇りを生じない(ohne Hauchbildung)」というドイツ語の頭文字に由来する。細菌を培養した時、寒天培地一面に広がって透明な培地を曇らせることなく、点状のコロニーを作るという見かけ上の性質を表現している。大腸菌は型により173種類に分類されており、O-157は157番目に認定された大腸菌を意味する。
さらに菌のべん毛による分類のH抗原からH7に分類される。「べん毛 (Hauchbildung)」に由来する。
サルモネラ抗原
サルモネラはO抗原、H抗原、Vi抗原によって各種の血清型に型別される。
1) O抗原::2つ、あるいはそれ以上複数の耐熱性のO抗原をもっている。この抗原のうち、一つの主抗原とその他の副抗原の分布によって「群」が決定される。抗原は1〜67まであり、この抗原を「群=グループ」で分け、O2群〜O67群までの45群に区別される。
(例)サルモネラ免疫血清検査法では、多価血清で2つのO多価血清とO1多価陽性の試薬を用い、
- O多価血清かどうか→陽性ならO2群, O4群, O7群, O8群, O9群, O9/46群, O3/10群, O1/319群のいずれか
- O1多価血清かどうか→陽性ならO11群, O13群, O6/14群, O16群, O18群, O21群, O35群のいずれか
- 多価血清が陰性なら→Salmonella Typhi, Salmonella Paratyphi C, Salmonella Dublinのいずれか、である(多価血清陰性ならVi血清検査を行い、Salmonella Typhi, Salmonella Paratyphiなどとの鑑別をする)。
2) H抗原:易熱性(熱によって壊れる)の鞭毛抗原。2種類のH抗原をもつ菌(diphasic)と、1種類の抗原の菌(monophasic)がある。
3) Vi抗原:サルモネラのV抗原は莢膜様抗原で易熱性(熱によって壊れる)であり、S. Typhi、S. Paratyphi C、S. Dublinなどに認められるVi抗原で、これらの菌の新鮮分離株にのみ認められ、その菌株の発病力に関与している。Vi抗原は100°C、30分以上の加熱で容易に消失する。また、継代培養を続けるとVi抗原は消失する。
Salmonellaの抗原による分類 佐賀大学 HP
赤枠で(旧表記)S. paratyphi, S. typhiを示す。基本的にチフス菌はサルモネラO9群,パラチフスA菌はサルモネラO2群に属する。
Salmonella 属のスライド凝集試験について
Salmonella 属の血清型別には,菌体抗原(O 抗原),莢膜抗原(Vi 抗原)および鞭毛抗原(H 抗原)が用いられる.
森 朋子ら.スライド凝集試験(赤痢菌,サルモネラ菌)こちら
細菌の抗原はスライド凝集試験で,生化学的性状により菌の属や種が決定した後,血清型を決定するために実施する検査で,特別な器具を必要としないため検査室で容易に実施できる.検査室では主に赤痢菌(Shigella 属),サルモネラ菌(Salmonella属),下痢原性大腸菌,コレラ菌(Vibrio cholerae)に対して実施している。
サルモネラの分類
サルモネラの菌名について
Salmonellaという属名は、1885年にアメリカでサルモネラ属の基準株であるブタコレラ菌 S. enterica serovar Choleraesuis を発見した細菌学者、ダニエル・サルモンにちなんで名付けられた。ただし、サルモネラ属に属する細菌の分離はそれ以前から行われており、ヒトに対する病原性サルモネラとして最初に分離されたのはチフス菌 S. enterica serovar Typhi である。チフス菌は1880年にカール・エーベルトにより命名され、1884年にゲオルク・ガフキーがその純培養に成功した。
2005年現在、サルモネラ属は生物学的性状からS. entericaとS. bongoriに分類され、さらにS. entericaは6亜種に分類される。また、血清学的には、細胞壁リポ多糖体であるO抗原と、鞭毛タンパク質であるH抗原の組み合わせで2,500種類以上に分類される。
サルモネラ属の分類は細菌の中でも最も混乱の大きいものの一つであり、分類と学名表記を統一するための裁定が頻繁に行われている。古典的なサルモネラ属の分類は、O抗原とH抗原の組み合わせに基づいたもので、1926年にWhiteが提唱し後にKaffmannが拡充した、Kaffmann-Whiteの抗原表に従って行われてきた。この旧分類では、例えばサルモネラ属のうちO9:Hdという抗原型の組み合わせを持つものをS. typhi(旧和名:腸チフス菌)という一つの生物学的種として扱っていた。
その後、細菌学分野全体として生化学的、遺伝子学的分類が行われるようになり、分類が混乱した。
そこで1985年には生物学的分類と整合させることを目的にSalmonella choleraesuis (ブタサルモネラ菌の菌種名のみの表記)の1属1種とすることが「提案」されたが、Salmonella enterica subsp. enterica Salmonella serovar Choleraesuis(亜種と血清型が混在した正式表記)と混同されるとして、2002年にはSalmonella entericaの1属1種とすることが正式菌名として「承認」された。その後、2005年にはSalmonella entericaとSalmonella bongoriの1属2種(サルモネラ属の中に、”enterica”と”bongori”の2つを組み込んだ)とし、entericaの下に6亜種を設ける分類法が裁定された。またこのヒトに病原性のある6亜種をローマ数字で、I~VIに亜種群分類していたが、後述するようにヒト非病原性Salmonella (S.) bongori は当初 S. enterica の亜種として分類され、その略号としてⅤが用いられたため、混乱が生じたため、このI~VIによる亜種群分類はあまり用いられなくなった。
サルモネラ菌の現行の分類
Salmonella enterica 以下で合計約2,500種。
ヒトや動物に病原性のあるサルモネラはsubsp. enterica のみで、その他の亜種は原則的にヒトに対して非病原性であるが、人獣共通感染症などで少数例の報告がある。
現行の分類
病原性サルモネラ:以下に約 1500 種を含む。
Salmonella enterica subsp. enterica Salmonella(ヒトに特異的病原性を有するのはこの菌種のみ)
さらに血清型serovarの分類を加えて、
serovar Choleraesuis ブタコレラ菌(非チフス性サルモネラ腸炎の原因菌)
serovar Typhi チフス菌(いわゆるチフス菌)
serovar Paratyphi A パラチフス菌A(いわゆるパラチフス菌A)
serovar Paratyphi B パラチフス菌B
serovar Paratyphi C パラチフス菌C
serovar Typhimurium ネズミチフス菌(Typhimurium: Typhi; チフス性の, murium; ネズミの。非チフス性サルモネラ腸炎の原因菌)
serovar Enteritidis 腸炎菌(非チフス性サルモネラ腸炎の原因菌で最も多い)
以下に約 1000 種を含む。
Salmonella enterica
subsp. salamae Salmonella
subsp. arizonae Salmonella
subsp. diarizonae Salmonella
subsp. houtenae Salmonella
subsp. indica Salmonella (ヒトに病原性を有するのはこの菌種のみ)
Salmonella bongori(アフリカ、チャドのボンゴルという地名で見つかった)
注釈
*意味:subsp.: 亜種subspecies, enterica: 腸管の **腸チフス、パラチフスはそれぞれチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi)、パラチフス A 菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A)による全身性感染症であり、一般のサルモネラ感染症とは区別される。チフス菌、パラチフス A 菌以外にもヒトにチフス様症状を起こすサルモネラ属菌(S. Sendai, S. Paratyphi B, S. Paratyphi C)もあるが、わが国ではこれらの感染症は一般のサルモネラ症として扱われている。森田昌知,大西真ら.腸チフス、パラチフス.モダンメディア. 2011: 57(12). P.357-359 こちら
***一方、海外ではチフス、パラチフスとしてS. Paratyphi Aと同様にS. Paratyphi B, S. Paratyphi C を扱っている。Marie Anne Chattaway. Phylogenomics and antimicrobial resistance of Salmonella Typhi and Paratyphi A, B and C in England, 2016-2019. Microb Genom. 2021 Aug;7(8):000633. doi: 10.1099/mgen.0.000633. PMID: 34370659 こちら
現行の分類の分類法によると、チフス菌やパラチフス菌、食中毒性サルモネラなどの病原性サルモネラは、ほとんどの「いわゆる病原性サルモネラ菌」は、Salmonella enterica subsp. entericaに属する。
この亜種の中で、さらにKaffmann-Whiteの分類に準じた抗原性の違いに基づく血清型 (serovar) による分類がなされている。
例)いわゆる「チフス菌」の正式な学名はSalmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi(サルモネラ属エンテリカ菌種・エンテリカ亜種・血清型チフス)となるが、”subspecies enterica”を省略して、S. enterica serovar Typhiと略記してもよいとされている。なお正式に認められたものではないが、これをSalmonella (S.)Typhiと略記することもしばしば行われている。
旧分類名である“Salmonella typhi”や“Salmonella choleraesuis”の用語は混乱のもととなり、使用しない。
サルモネラの菌体に存在する2つの表面構造、一つは菌体抗原(O抗原とも呼ぶ)、もう一つは鞭毛抗原(H抗原)、の免疫学的相違によって血清型別される。
O抗原は一般にO群(group)に統一して、O2群あるいはA群、O4群あるいはB群、O9群あるいはD群と言うこともある。このO群は細菌菌体の耐熱性糖脂質(リポ多糖)である。
O抗原(算用数字表記)とH抗原(アルファベットの小文字と算用数字)の組み合わせによって菌株の抗原構造が決められ、S. Typhimurium(ネズミチフス菌)は”O4:i:1,2”, S. Enteritidis (腸炎菌)は”O9:g,m:-“のようにOとH抗原をコロン(:)で結んで表記する。
H抗原は鞭毛を構成するタンパク質で易熱性である。H抗原には遺伝学的に異なった複数の抗原を有しているものがあるが、これらは複相性(diphasic)と呼ばれる(その抗原を1相あるいは2相という)。
サルモネラの正式菌種名は長い。よって日常では長い表記を書いていられないので、便宜上略号で記されることが多い。
歴史的にSalmonella (S.) bongori は当初 S. enterica の亜種として分類され、その略号としてⅤが用いられたため、番号の逆転現象が生じた。
ヒトに病原性を有し、患者あるいは保菌者から分離されるのはSalmonella I が主で、ごく稀に Salmonella IIIa が分離される。サルモネラは保有する O 抗原と H 抗原の種類によって約 2500 種の血清型に分類され、Salmonella I の約 1500 種は各々に固有名が付けられている。
サルモネラの記載例
- 学術論文(国際誌)等の菌種名表記
1)Salmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidis
2)Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhimurium
- 通常の検査や疫学調査成績等は血清型で表記する
1)Salmonella Enteritidis または S. Enteritidis
2)Salmonella Typhimurium または S. Typhimurium
- 保健所や検査機関等での表記
通常、H抗原は決定しないので記載は
1)サルモネラ O9群
2)サルモネラ O4群
とされる。
論文に細菌名を記載する場合は、イタリック体(斜体文字)か下線を引くことで表記する。また、初出の際には略さずに記すが、2回目以降は属名を頭文字の大文字で略してよい。
例:(1回目)Staphylococcus aureus → (2回目)S. aureus
なお、”S. aureus”のあとは半角スペースを空ける。
まだ命名されていない種を記載する場合は、属名に続く種名の部分をsp.(1種の場合; species)またはspp.(2種以上の複数種の場合; species. sp.とspp.のつづりは同じ)と表記する。亜種はssp. (subspeiciesの略)。sp., spp., ssp.は学名ではないのでイタリック体で表記しない。こちら
遺伝子型による分類
遺伝子型(genotype)とは, 菌体を構成する蛋白質や酵素をコードする遺伝子の違いによる分類で, 現在では, 場合によってはその遺伝子を構成する塩基配列を読み取ることで分類できる。
腸チフスおよびパラチフスとは
腸チフスはチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)、パラチフスは(Salmonella enterica serovar Paratyphi)によって発症する。
症状
腸チフスとは、チフス菌を原因菌とする経口感染性の全身感染症で、高熱を主徴とする。サルモネラ属菌による感染症の多くの症状が下痢症であるのに対し、腸チフスは白血球増加を伴わない持続性の全身感染症である(発見されたときにほぼ下痢がないのが特徴である)。
潜伏期間は 3 日~3ヶ月で、通常1~3 週間である。潜伏期の後、38℃以上の高熱が 4~6日間持続する。臨床的に、白血球減少、皮疹(バラ疹)、脾腫、および体温上昇のわりに脈拍が上がらない比較的徐脈があるが症例により異なる。致死率は0.4%とされている。症状消失後も、長期間に渡り保菌・排菌すると考えられる。
疫学
腸チフスは発展途上国であるアジア、アフリカに多く見られる。腸チフスはヒトの感染症であり特定の宿主動物は存在しない(ヒトが唯一の宿主)。胆道系から排菌する無症状保菌者が主な感染源と考えられている。
世界では腸チフスは2690万人、パラチフスは540万人が一年間に罹患していると推定されており、現在でも衛生水準の高くない開発途上国で蔓延している。特に南アジア、東南アジアでの罹患率は高く、また中南米、アフリカでも発生が見られる。先進国における発生は散発的であり、その多くは流行地域への渡航者による輸入事例である。日本では近年、腸チフス及びパラチフスは年間20~30例で推移しており、70~90%程度が輸入事例である
チフス菌は感染症法第3類に分類され、全数把握され、診断後ただちに届け出が必要である。
抗原血清学的分類
- チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)は、O群血清でO9群凝集、O抗原は1, 2, 12のいずれか、H抗原血清dで凝集する。一部O多価血清で凝集が起こらない場合は、Vi血清で凝集を確認する。Vi血清で凝集=抗原を有する菌と判定されたら、加熱処理により易熱性を確認する。
- パラチフスは(Salmonella enterica serovar Paratyphi)は、O群血清でO2群凝集、O抗原は9, 12のいずれか、H抗原血清aで凝集する。H抗原aの抗原性が失われている変異例があるので注意を要する。
非チフス性胃腸炎とは
前述のチフス菌以外のSalmonella属細菌によって起こる、胃腸炎,菌血症などを引き起こす。
疫学
WHOの報告によると、全世界において年間に10人に1人は下痢症を経験するとされるほど頻度が高い。特に5歳以下の小児は年間5億5000万人が罹患し、下痢症の代表的な4つの原因(ウイルス性など)のうちサルモネラ性腸炎はそのひとつとされる。
症状
症状は下痢,発熱,腹痛などの局所症状などである。
診断
診断は血液,便などの検体の培養による。
感染経路
非チフス性サルモネラは、ヒト以外の宿主である家畜や家禽およびイヌ、ネコ、小鳥等のペット動物、さらにカメ、ヘビなどの爬虫類の腸管内に保菌され、さらに下水、河川水などの環境に広く分布している。このため各種の汚染された食品、水を介する感染機会は多い。なかでも食肉や卵などの汚染率が高く、食品衛生上問題となる。
参考文献 神奈川県衛生研究所 こちら
国立感染症研究所 こちら
サルモネラ Wikipedia こちら
感染症情報センター こちら
サルモネラ菌のO9って何ですか?また、菌種名を教えてもらえますか? こちら
千葉県衛生研究所 こちら
F W Brenner. Salmonella nomenclature. Clin Microbiol. 2000 Jul;38(7):2465-7. doi: 10.1128/JCM.38.7.2465-2467.2000. PMID: 10878026 こちら
坂崎利一について
日水製薬 こちら
坂崎利一は元国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)の細菌第一部第一室長。微生物研究施設である日水製薬にも属し、日本の細菌学発展に功績を残した。
坂崎 利一.細菌の抗原構造.検査と技術 6巻11号 (1978年11月)こちら
写真は富山県の杉沢の沢杉 こちら
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