CRPは肺炎球菌の構造物であるC多糖体と沈降反応を示す蛋白として発見、報告された(1930年)

内科・感染症

概論
C反応性蛋白質(C-reactive protein:CRP)は日常診療で汎用される血液検査上の炎症マーカーである.
 CRPは白血球数と同様に,感染症や炎症疾患を診断する際に提出される検査項目である.CRPは炎症の状態を反映しやすいことから,診断の指標にすることができる.

急性期タンパク CRP とは?
 C反応性蛋白 C-reactive protein (CRP)は、1930年、Tillettらが肺炎患者の血清中に肺炎球菌の構造物であるC多糖体と沈降反応を示す蛋白として発見し報告した [1]。
CRP の分子量は約 112,540, 沈降係数は 7.5 Sで、弱アルカリで分子量 23,048 のサブユニット 5 個(5量体)に分解される糖鎖を有しない環状ペプタイド(cyclic pentamer)である(図)。

CRP https://ja.wikipedia.org/wiki/C%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E6%80%A7%E8%9B%8B%E7%9
CRP https://m.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB0238841.htm

蛋白質(タンパク質)の構造は、4つの階層構造を持つ。すなわち、一次構造、二次構造、三次構造、四次構造である。

  • 一次構造:一次構造とは、タンパク質を構成するアミノ酸の配列のことである。Ala-Gly-Pro, といった記法で表される。一般的にアミノ酸配列は、アミノ基末端(N末端)を、1番として左において表す。つまり、「アミノ酸の配列」。
  • 二次構造:二次構造とは、約 10~20個のアミノ酸残基による、ポリペプチド鎖において局所的に見られる、規則的な構造のことである。α-ヘリックス構造や β-シート構造などがある。ポリペプチド鎖のペプチド結合間や、周囲の水分子との水素結合による、かなり安定な立体構造のことである。つまり、「ポリペプチド鎖が水素結合によって、らせん状やシート状の構造になったもの」。
  • 三次構造:三次構造とは、一分子のタンパク質分子の三次元構造のことである。イオン結合、疎水結合、ファンデルワールス力、水素結合、S-S 結合(ジスルフィド結合)など、様々な力により安定する。つまり、「1本のポリペプチド鎖のなかで、二次構造をとった部分がさらに折り畳まれ、一定の配置をとって形成される立体構造」。とくに一つの三次構造中で構造的、機能的にまとまった構造単位をドメインと呼ぶ。
  • 四次構造:四次構造とは、三次構造を形成したタンパク質分子が2分子以上集合した、重合体のことである。すなわち、比較的少数のモノマー(構成単位。単量体とも呼ばれる)が集合したオリゴマー構造のことである。四次構造を構成するそれぞれのタンパク質分子は、サブユニットと呼ばれる。つまり、「ポリペプチド鎖が複数集まってできたもの」。集合している一つ一つのポリペプチド鎖をサブユニットと呼び、互いにさまざまな非共有結合によって結合していることが多い。サブユニット単体で機能するタンパク質を単量体、複数体で機能するタンパク質を(n)量体と呼ぶ。

肺炎球菌のC多糖体 C-polysaccharideに反応する蛋白質で、5量体の四次構造を形成する。

CRPはマクロファージとT細胞からのIL-6の分泌により、肝臓と脂肪細胞から分泌される。CRPは、死細胞や細菌表面のリゾフォスファチジルコリンに結合し、C1qを介して補体の古典的経路を活性化し、細菌の溶菌・凝集に関与する。CRPは熱に弱く 65℃,30分で破壊される。

病原微生物が種々の障壁を越えて生体内に侵入すると,宿主側では自然免疫応答としてマクロファージがパターン認識レセプターによって病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns:PAMPs)を捕捉し,炎症性メディエーターである種々のサイトカイン,ケモカインを産生,放出する.細胞外で病原性を発揮する一般細菌の場合,このようなサイトカインは,インターロイキン(interleukin:IL)-1,IL-6,腫瘍壊死因子 α(tumor necrosis factor-α:TNF-α)に代表され,感染を制御するためにさまざまな反応を引き起こす

細菌感染症に伴う生体側の一連の反応とCRP の作用.

CRP は直接的な殺菌作用をもつわけではないが,①細菌のオプソニン化と②補体の活性化を介し,間接的に病原体の制御に寄与する.CRP の産生刺激は PAMPs の認識による経路がメインであるが,病態によっては感染部位の組織傷害に伴う DAPMs を介した経路もオーバーラップしてくる.このように,検査項目としての CRP は,あくまでも感染症に対する生体側の応答を反映したものであり,病原体や感染部位の状態を直接的に指し示すものではない.

DAMPs:damage-associated molecular patterns,PAMPs:pathogen-associated molecular patterns,TNF-α:tumor necrosis factor-α,IL:interleukin,CRP:C-reactive protein,SAA:serum amyloid A protein.

CRP の生体内における動態

 CRP の血中濃度は,産生刺激(感染症の発症)から約 6 時間で上昇を開始し,48 時間後にピークを迎える(図).半減期は約 19 時間と報告されている.このような CRP の反応速度は急性期蛋白としては迅速なものである.さらにCRPは数日単位で変動するが,好中球数やプロカルシトニンは数時間単位で迅速な応答速度・変動を示す.

CRPの体内動態
CRPの上昇から下降までの推移 茂呂 寛. 感染症におけるCRP. 臨床検査. 2020. 64(9) pp.946-951

CRP 測定結果に影響する因子

CRPは炎症性サイトカインにより産生が促され,リガンドであるホスホコリンを介して,種々の病原体や損傷した宿主細胞を認識し,これらのクリアランスに関与する.その結果,CRPを上昇させる要因は,細菌感染症以外に、真菌感染症、ウイルス感染症,手術・外傷・熱傷などの組織侵襲や自己免疫疾患などがある.

一方、CRP の産生を抑制する要因として,肝機能障害,糖質コルチコイドや免疫抑制薬の使用,IL-6 を阻害する生物学的製剤(トシリズマブなど)の使用が挙げられる.

 以上、CRPは,感染症,非感染症による上昇,亢進・抑制に影響を及ぼす因子が多数存在するため、総合的な解釈を要する。

参考文献

1.            Tillett, W.S. and T. Francis, Serological Reactions in Pneumonia with a Non-Protein Somatic Fraction of Pneumococcus. J Exp Med, 1930. 52(4): p. 561-71.

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