写真は、急性赤芽球性白血病のメイ・ギムザ染色.核不整、切れ込み、ときに2核で、細胞質が淡青に染色される異常芽球の増殖を認める。
急性赤血球性白血病Acute erythroid leukemia (AEL) は、骨髄において赤芽球の増殖をみる急性骨髄性白血病(AML)のうちの稀な病態で、AMLのうち2~5%を占める。
AELの定義
1976年のFAB分類で初めて記載された。
2001年のWHOでは、2つのサブタイプが明記された。
第一の型は、急性赤血球/骨髄性白血病acute erythroid/myeloid leukemia(いわゆるM6aと呼ばれる)は、非赤血球成分中に赤血球前駆細胞が50%以上、芽球が30%以上存在するものとされる。
第2の型は、純粋な赤血球性白血病pure erythroid leukemia (いわゆる M6b) で、全骨髄細胞の80% 以上が、未熟な赤芽球細胞で占められる。いずれも赤血球形成の異常を認める。
M6b は非常にまれである。M6a と M6b はいずれも予後不良である。
M6a の分類は、芽球の割合により、骨髄異形成症候群 (MDS) か AML かの鑑別が必要となる。
2016 年の WHO 分類では、赤白血病の診断基準が変更され、以前は赤血球/骨髄型と診断されていた症例が MDS に移行された。よってFAB分類のM6b のみが名称維持されている。芽球が20%以上、赤芽球が50%以上の症例の診断はAMLとなる。
最新のWHO分類第5版ではこの変更が維持され、純粋赤白血病の定義は急性赤芽球性白血病(赤芽球が80%以上、そのうち前赤芽球が30%以上)と呼ばれている。
WHO 2017分類の改訂では,非赤芽球系細胞(NEC)による芽球比率の基準は廃止され,従来の急性赤白血病 (FAB分類:M6a)は骨髄異形成症候群に含まれることとなった.
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骨髄所見
【所見】骨髄の80%以上が赤芽球で30%以上を未熟な赤芽球が占める。
芽球の比率が赤芽球比率に関わらず、全有核細胞(ANC)で計算されるようになり、従来のM6aは他のAMLまたはMDSへ移行されることなった(WHO.2017)。
赤芽球系:グリコフォリンA (CD235a)、ヘモグロビンA、carbonic anhydrase1 (CAⅠ)陽性
【芽球の観察のポイント】
大型で好塩基性が強度な未熟な前赤芽球を認め、PO染色に陰性で、PAS染色に顆粒状の陽性を呈することが多い。
M6bの鑑別のポイント
M6bの細胞形質は,CD235a,ヘモグロビンA(HbA)が陽性
MPOおよび骨髄系抗原は陰性
CD34,HLA-DRはしばしば陰性
未熟な細胞ではCD235aが陰性
共通する陽性抗原はCA I,CD36およびA,B型やGerbich血液型とされている。
参考:林田雅彦、急性赤芽球性白血病M6bの細胞表面抗原の解析.サイトメトリーリサーチ 15 (2), 7-14, 2005
図 赤血球生成と PEL
赤血球分化の段階で、最も初期の造血前駆細胞は、巨核球赤血球前駆細胞 (MEP) から生じるバースト形成単位赤血球 (burst-forming unit erythroid; BFU-E) である。BFU-E はコロニー形成単位赤血球 (CFU-E) に分化し、その後、形態学的に赤血球系の最も初期の赤血球細胞である前赤芽球に分化する。PEL では、白血病細胞は分化能力を失い、腫瘍性に異常増殖する。
分子・遺伝子学的異常
染色体異常 細胞遺伝学的レベルでは、PEL の多くの症例は複雑な核型を示す。5 番染色体と 7 番染色体の異常が見られる。PEL では、t(1;16)(p31;q24)/NFIA-CBFA2T318 や t(11;20)(p11;q11)/ZMYND8-RELA など、染色体転座に起因する融合遺伝子が報告されている。
遺伝子異常 PEL では特定の遺伝子変異は報告されていない。FLT3、NPM1、CEBPA など、他の種類の AML でよく見られる変異は、PEL では非常に稀である。
参考:Pure erythroid leukemia. Am J Hematol. 2017 Mar;92(3):292-296. doi: 10.1002/ajh.24626. Epub 2017 Feb 3. こちら。
冒頭の写真は五色塚古墳。こちら。
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