冒頭の写真は、ゆりかもめの東京ビックサイト駅。試験会場の最寄りの駅である。こちら。
分子病理専門医に合格しました。これまで過去に資格試験を複数受験しましたが、その中でも受験に際して、比較的時間と労力を掛けた試験です。合格に至るまでの試験対策等を記載します。(複数回で記載予定)。
分子病理専門医とは 病理学会 こちら
近年のゲノム医療の進歩は目を見張るものがある。特にがん診療において、ゲノム医療は重要である。がん・悪性腫瘍の最終診断を行う病理専門医は、腫瘍の形態診断に加えて、分子病理学の知識が求められるようになってきた。顕微鏡で見て(診て)、形態診断だけすれば良い時代は終わったと言える。形態診断以上に重要なのが、がんの分子・遺伝子診断である。
2020年、日本病理学会は「病理専門医」を取得した者に、更なる知識・技術を有する「分子病理専門医」の認定制度を設けた。この制度は、ゲノム医療において求められる技術や知識を身につけ、エキスパートパネル等で優れた知識に基づいた助言等ができる優れた専門家=分子病理専門医を認定することとした。
現在、ゲノム医療は「がんゲノム医療中核拠点病院(以下:中核拠点病院、全国に12病院)」「がんゲノム医療拠点病院(以下:拠点病院、33病院)」および「がんゲノム医療連携病院(以下:連携病院、188病院)」において、がんゲノムプロファイリング検査が保険診療として実施され、その結果に基づいて中核拠点病院および拠点病院において多職種の医療従事者が参加してエキスパートパネルが開催されている。
がんゲノムプロファイリグ検査には病理組織(ホルマリン固定パラフィン包埋:FFPE)検体が主として用いられる。このFFPE標本から作製された病理組織標本を診断するのが病理医である。病理医は検体の質をチェックし、腫瘍細胞含有割合の判定等を行う。さらにエキスパートパネルでは、特に病理診断と関連した分子病理学的な判断が求められる。がんゲノム医療においては、これら技能を兼ね備えた専門性の高い知識を有する医師(病理医)が、分子病理専門医であり、この育成・認定が必要である。
日本病理学会では、分子病理専門医を認定し、がんゲノム医療の中核拠点病院、拠点病院におけるエキスパートパネル等で活躍中である。もちろん、中核拠点病院、拠点病院以外の連携病院をはじめとしたがん診療を行う施設において、分子病理専門医は重要な位置を占める。
実際の試験について こちら。
1.出願資格
(1)日本病理学会会員であること。
(2)出願時に病理専門医もしくは口腔病理専門医であること。
(3)日本病理学会主催のゲノム病理標準化講習会を受講していること。
(4)日本病理学会主催の分子病理専門医講習会を受講していること。pdf
(5)エキスパートパネルに参加していること:最低3回の出席が義務。pdf
2.分子病理専門医試験出願書類
(1)分子病理専門医試験願書>>書式(5×4cm写真1枚を指定箇所に貼付のこと)
(2)ゲノム病理標準化講習会 受講修了証(写し)
(3)分子病理専門医講習会 受講修了証(写し)
(4)エキスパートパネル参加証明書>>書式(3回以上の参加が必要。写し不可)
(5)受験手数料(40,000円)の振込受領証のコピー
3.出願期間:例年9月1日より9月30日まで
4.受験手数料:40,000円(資格審査料10,000円 試験料30,000円)
5.試験実施日:例年12月第3日曜日(要確認)
6.試験会場:TOC有明 コンベンションホール(〒135-0063 東京都江東区有明3丁目5-7)
7.試験時間:
10時-11時30分 Ⅰ型(選択問題:マークシート)
13時-15時 Ⅱ型(記述問題)
Ⅰ型(選択問題)の具体的な内容
選択問題の I 型は分子病理専門医講習会・ゲノム病理標準化講習会で使用したテキストの内容を網羅しているとされている。
I 型対策として講習会の「分子病理専門医講習会テキスト」および「ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程」およびpdfが基本である。具体的には分子病理専門医カリキュラムに記載された事項を十分に理解、説明できることが求められる。
II 型(記述問題)の具体的内容
主にがんゲノム情報管理センター(CCAT)調査結果レポートからの症例(架空例)が出題される。
その他、試験に有効な関連図書 こちら。
最も参考になるのは、がんゲノム病理学である。こちら
本書は前半で、分子生物学などのがんゲノム医療の基礎となる知識、DNA・RNAシークエンス、エピゲノム解析、FISHなどの各解析手法について記載されている。後半は、病理検体に基づくゲノム解析、エキスパートパネルなどの実践的な知識、バイオバンク、AIなどの先進技術の活用についての解説がある.
各章の最後に分子病理専門医試験を想定した「練習問題」(109問)、巻末に「症例問題」(5題)が収録されている。
専門医試験の対策として活用可能だが、特にⅡ型問題対策として、本書だけでは不足している。実際にはエキスパートパネルに参加・出席し、具体的な症例について討論に参加し、エキスパートパネルに基づいたゲノム症例レポートを作成することが望ましい。具体的な症例は、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、婦人科癌(子宮・卵巣腫瘍)、前立腺癌、膵癌、胆道癌、脳腫瘍、軟部腫瘍、唾液腺癌などがある。
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