神経内分泌細胞とは メイヨークリニック:こちら
神経内分泌細胞から発生する腫瘍を神経内分泌腫瘍と呼ぶ。神経内分泌細胞はその名のごとく、神経細胞と内分泌細胞の両者の特徴を有する。すなわち神経細胞機能とホルモン産生機能を有する細胞である。
神経内分泌腫瘍は稀な腫瘍で、全身に存在する神経内分泌細胞を母地とするため、全身のあらゆる箇所に発生する。最も好発部位は肺、虫垂、小腸、直腸、そして膵臓である。
神経内分泌腫瘍は様々な型が存在する。神経内分泌腫瘍自体はすべて悪性腫瘍であるが、緩徐な進行経過をたどるものから、非常に急速に進行するものまで幅広い。ある種の神経内分泌腫瘍はホルモンを産生し機能性腫瘍と呼ばれ、一方でホルモンを産生しない非機能性腫瘍もある。
神経内分泌腫瘍の診断と治療は、その組織型に依存する。ホルモンを産生するものから、急速に進行し転移をするものまで存在するからである。
神経内分泌腫瘍とは 国立がん研究センター こちら
神経内分泌腫瘍 (neuroendocrine tumor/neoplasm: NET/NEN)とは神経内分泌細胞に由来する腫瘍を指す。
神経内分泌細胞はホルモンやペプチドを分泌する細胞のことで、全身に分布するため、腫瘍も全身の臓器に発生する。なかでも消化器に発生するものが60%、肺や気管支に発生するものが約30%を占める。消化器のなかでは特に膵臓、直腸に発生するものが最も多いとされている。
NETは、1907年にドイツのOberndorferが カルチノイド(Carcinoid)と命名した。これは “がんもどき”= Carcin-: がん, oid: のような、の意味である。カルチノイドは他の悪性腫瘍と比べて進行は遅いが、遠隔転移するため悪性腫瘍である。2000年、世界保健機関(World Health Organization:WHO)により、消化器領域において、カルチノイドからNETという名称に変更された。しかし、肺、気管支領域においては膵消化管NETとは違い、細胞の形からカルチノイドと神経内分泌癌の 2つに分けられる。さらに、カルチノイドは定型カルチノイドと異型カルチノイドに、神経内分泌癌は小細胞癌と大細胞神経内分泌癌の4つに分けられている。
以下、病理画像:NETの情報サイト。写真は笹野公伸先生より HP
舛森 直哉. 前立腺における神経内分泌細胞. 臨床泌尿器科 60巻 7号 pp. 439-451(2006年06月)
前立腺上皮成分の大部分を占める分泌管腔細胞は,serine protease である前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)などの蛋白分解酵素を腺腔に向かって外分泌しており,男性副性器としての前立腺の機能の中心を担っている。
腺の基底膜側に位置し,前立腺上皮の 10%未満を占めるにすぎない基底細胞の機能は必ずしも明らかではないが,一部の基底細胞は transit amplifying cells や intermediate cells を経て分泌管腔細胞に分化する能力を有する幹細胞(stem cell)であると推測されている。
一方,前立腺内に散在する NE 細胞の起源に関しては,前立腺幹細胞より分化したとする前立腺起源説と,神経堤由来の NE 細胞が胎生期に periprostatic paraganglia を経て前立腺内に迷入したとする前立腺外起源説があるが,現時点では一定の結論をみていない。最近,Untergasser らは,IFN-γの刺激によりヒト基底細胞が NE 細胞に分化したことを報告しており,前立腺起源説を支持している。
NE 細胞は,biogenic amines や成長因子などのNE 因子を分泌することによって自身あるいは周囲の細胞に影響を及ぼし,正常前立腺の恒常性の維持に関与していると考えられている。また,最近では,NE 細胞と前立腺肥大症や前立腺癌の発生・進展との関連,さらには,前立腺癌における内分泌抵抗性の要因の一端としての NE 細胞の役割が注目されている。本稿では,前立腺におけるNE 細胞の役割に関連した基礎的・臨床的事項についての知見を筆者らが施行した実験結果を交えながら概説する。
前立腺に分布する NE 細胞は,腺腔と交通する 樹状突起を有する open cell type と,腺腔とは交通しないが近接する NE 細胞と連結する樹状突起を有する closed cell type に分類される。また,一部の NE 細胞は,前立腺に分布する神経線維の神経終末と結合しているとされている。NE 細胞は,細胞質内に多数の NE 顆粒を有している。電子顕微鏡では NE 顆粒は dense core granules として観察される。さまざまな形態や大きさを有する dense core granules が存在することが知られており8,9),分泌される NE 因子の種類を反映していると考えられる。NE 顆粒からは 200 種類以上のペプチドが合成・分泌される2)。表 1 に代表的な NE 因子とそれらの推測される機能を示す。それぞれの NE 因子は,外分泌的(exocrine あるいは lumencrine),自己分泌的(autocrine),傍分泌的(paracrine),神経分泌的(neurocrine)に,自身の細胞,隣接する腺上皮細胞,間質細胞,血管内皮細胞,神経細胞に作用して,それらの増殖,分化,分泌などの機能を調節しており,前立腺全体の恒常性を維持していると考えられる。
前立腺内に存在する NE 細胞を検出,定量化するためには,一般的には NE 因子に対する免疫組織化学的検討が行われる。Chromogranin AはNE 細胞を検出するためのgeneric marker として使用されている。このほか,serotonin や neuron-specific enolase(NSE)などに対する免疫組織化学染色も用いられる。一部のNE細胞は免疫組織化学染色で、アンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)や PSA の発現を認めない。
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