ブドウ糖非発酵菌は、大腸菌などの腸内細菌目細菌より薬剤耐性を呈しやすい

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写真は血液培養から検出された緑膿菌Pseudomonas aeruginosa. 細いグラム陰性桿菌を多数認める.

はじめに

空気環境で生育できる菌は,無酸素環境(嫌気状態)でブドウ糖を分解する発酵菌(ブドウ糖発酵菌)と,この条件ではブドウ糖を分解しない非発酵菌(ブドウ糖非発酵菌: Non-glucose fermenting gram negative rod; NFGNR)に分けられる.ブドウ糖発酵菌は通性嫌気性菌,非発酵菌は好気性菌である.この発酵と非発酵の区別はグラム陰性桿菌では重要で,分類および同定のための鑑別点とされている.

Escherichia coli,Vibrio cholerae,Haemophilus influenzaeなどは発酵菌, Pseudomonas aeruginosa,Alcaligenes faecalisなどは非発酵菌である.

臨床現場で、一般的ににブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌または非発酵菌と呼ばれているのはPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)やAcinetobacter baumaniiなど普通培地に生育する菌種,菌属である.

ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(NFGNR)は、ブドウ糖を嫌気的に発酵しないグラム陰性桿菌の総称で、土壌、水系環境以外に、ヒトの皮膚や粘膜にも存在する。栄養要求性が低く、栄養分の乏しい湿潤環境でも増殖可能で長期に生存する。

Pseudomonas spp.、Burkholderia spp.、Acinetobacter spp.、Stenotrophomonas spp.、Chryseobacterium spp.、Achromobacter spp.などが臨床検体からも検出されることが多く、病院内の日和見感染菌として注意すべき菌とされている。

NFGNRの多くは, 様々なβ-ラクタマーゼを産生すること、腸内細菌目細菌と比較して各種抗菌薬に対する外膜の透過性が不良である, などの理由から有効な抗菌薬が少ない。さらにプラスミド等の外来性遺伝子を介して様々な耐性機構を獲得して多剤耐性となる場合も多い。またバイオフィルムを形成する菌株も多く、抗菌薬の効果が減弱することが知られている。

稀なブドウ糖非発酵菌: Comamonas kerstersii

Comamonas kerstersiiは、Comamonas属に属する好気性グラム陰性桿菌である。2003年にComamonas terrigena(C. terrigena)DNAグループ3から再分類され、C. kerstersiiとして記載された。現在までに、原核生物命名リスト(LPSN)に正式名称が公表されている種が25種あり、そのほとんどは土壌、水、植物などの環境源から検出されている。これらのComamonas属菌のうち、ヒトへの感染に関与しているのは5種のみで、そのうちComamonas testosteroni(C. testosteroni)が最も多く、次いでC. kerstersiiとなっている。現在、質量分析法や16S rRNA遺伝子配列解析技術の発達により、多くの細菌種が正確に分類されるようになり、既知の菌種数は増加している。そのため、C. kerstersiiによる感染症の報告も徐々に増加している。2013年にAlmuzaraらによってC. kerstersiiによる腹腔内感染症の最初の症例が報告されて以来、C. kerstersiiに関連するヒト感染症の症例は数十件報告されている。

本菌の薬剤耐性.

Complete Genome Sequence of a Third- and Fourth-Generation Cephalosporin-Resistant Comamonas kerstersii Isolate. Microbiol Resour Announc. 2021. PMID: 34264111

報告はこちら

Comamonas kerstersiiはNFGNRで、虫垂炎、尿路感染症、腸腰筋膿瘍、卵管炎に関連した報告がなされている。また、便からも検出される。第3世代(セフタジジム、セフォタキシムなど)および第4世代(セフェピムなど)セファロスポリンに耐性を示すC. kerstersii分離株が複数報告されている。
2019年12月、クロアチアから帰国した70代のスイス人男性がインゼルシュピタル(スイス、ベルン)に入院した。直腸スワブからC. kerstersii株3132976が分離された。種の同定は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)(Bruker)によって行われた。この株はカルバペネム、アミノグリコシド、テトラサイクリン、フルオロキノロン、およびポリミキシンに感受性を示したが、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生であり、セフタジジム、セフォタキシム、およびセフェピムには耐性、セフタジジムまたはセフォタキシムとクラブラン酸の併用には感受性を示した。

冒頭の写真は浦添ようどれ。こちら

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