ネコ咬傷に注意! Capnocytophaga canimorsus感染症

内科・感染症

東京・渋谷区にあるラーメン店「Japanese Soba Noodles 蔦」の公式アカウントTwitterから、有名オーナーシェフがネコに噛まれたあと、死亡したことが報告された。こちら。Yahoo Newsはこちら

Japanese Soba Noodles 蔦オーナーシェフ大西祐貴が享年43歳にて急逝いたしました。ここに生前のご厚誼に心より感謝し謹んでお知らせ申し上げます。

謹んで故人の冥福をお祈りいたします。

ネコ咬傷による感染症の病原体のひとつにCapnocytophaga canimorsusがある。これによる感染症が推定される。

Capnocytophaga canimorsusとは
(鈴木道雄.人と動物の共通感染症の最新情報 カプノサイトファーガ感染症.日獣会誌.2019: 72. 256-260)
(概論)
Capnocytophaga 属菌はヒトや動物の口腔内に常在する通性嫌気性のGram陰性桿菌である.1979 年に新しい属として確立され,現在 9 種が知られている(このうちイヌ・ネコの保有菌種として C. canimorsus および C. cynodegmi の2 菌種が知られていて,2016 年に新たな菌種として C. canis が認められた. Capnocytophaga canimorsusの属名の “Capnocytophaga” はギリシャ語で「二酸化炭素を同化・吸収する者」を,” canimorsus”はcanis-(dog,犬)と-morsus(bite,咬む)に由来する.
(微生物学)
Capnocytophaga 属菌の特徴は,
 二酸化炭素要求性を有する
 寒天培地上で滑走能を示す
 栄養要求が厳しく,人工培地での増殖が遅い
 グラム染色による鏡検では細長い,グラム陰性桿菌として観察される.
 生化学的性状およびコロニーの特徴
 人が保有する 6 菌種はすべてカタラーゼ試験陰性である
 犬・猫が保有する 3 菌種はいずれもカタラーゼ試験陽性である.
 犬・猫保有の 3 菌種のコロニーは乳白色~灰白色で,コロニーが成長するとその辺縁に薄い膜のような拡がりを認めることがある.これは Capnocytophaga 属菌のもつ滑走能によるが,菌種,菌株や培養条件によって滑走性を示す程度には差異がある.
 培養条件は 基本的に35~ 37℃,5~ 10%CO2 培養の条件だが,微好気培養や嫌気培養でも生育する.
 培地は栄養を豊富に含んだ血液寒天培地(5%血液加ハートインフュージョン寒天培地など)が適する.
 Capnocytophaga 属は通性嫌気性のグラム陰性桿菌であり,1979 年に新しい属となった時には 3 菌種であったが,現在は計 9 菌種である.
 このうち 3 菌種が犬・猫の口腔内に常在しており,その他の 6 菌種は人の口腔内常在菌である.犬・猫が保有するC. canimorsus と C. cynodegmi は,1990 年に Capnocytophaga 属 4 番目と 5 番目の菌種として認められた.さらに 2016 年に C. canis が 9 番目の菌種として確認された.
 人の歯科医学領域では Capnocytophaga属菌は,歯周病関連菌に位置づけられており,まれに日和見的に自家感染を起こして,敗血症,心内膜炎など重篤な症状に至ることもある.
 犬・猫の口腔内に常在しているCapnocytophaga 属は,その宿主動物への影響は明らかでない.
 犬・猫ともに,C. canimorsus,C. cynodegmi 及び C. canis の 3 菌種のいずれかを保有している割合は 9 割を超える.

猫の犬歯
(猫との暮らし大百科 こちら)一部改編
人の歯と同様に、猫の歯もその機能によって「切歯」「犬歯」「臼歯」に分類される。
最も目立つ犬歯は、上下合わせて4本あり、大きく尖っている。猫が野生の状態で獲物を捕らえる際には、犬歯を獲物の首筋に「くさび」の様にしっかり刺し込んで仕留める。また、犬歯は肉を引き裂く際に使われる。
成熟したネコで上の犬歯は13 mm, 下の犬歯は11 mmとされ、ネコに咬まれると傷は深く骨に達することがある.
ネコの口腔内常在細菌叢
猫咬傷の微生物学的特徴は,犬咬傷とほぼ同様で,好気性菌および嫌気性菌といった多種類の細菌が検出される(表1).
最も高頻度に検出される病原体はPasteurella属で,そのなかでもPasteurella canis が多い.Pasteurella属以外では,レンサ球菌属,ブドウ球菌属,ナイセリア属およびFusobacterium属が報告されている.
 Capnocytophaga canimorsusは過去に”CDC group DF-2 “と呼ばれていた.DF-2とは,Dysgonic(発育不良または緩徐に増殖する), Fermenter(発酵する)菌の略称で,最初の菌株は1961年,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention, CDC) で発見された.

厚生労働省 Q&A こちら

日本での発生状況は?
A9 日本においては、1993年から2017年末までに計93例(うち死亡19例)が確認されています。大半がC. canimorsusの感染例ですが、このうちの重症例3例(うち死亡1例)は2016年に登録された新しい菌種であるC. canisの感染であることがわかっています。また、C. cynodemgi感染は軽症例2例の報告があります。
感染事例の内容をみると、患者の年齢は、40歳代以上の中高年齢者が95%超を占めており、平均年齢は約64歳です。性別は男性が68例、女性が25例です。患者のうち、糖尿病、肝硬変、全身性自己免疫疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を有する方は約半数にとどまります。生来、健康な方でも感染・発症することが確認されています。
感染原因は、イヌの咬掻傷52例、ネコの咬掻傷20例、イヌ・ネコとの接触歴のみ18例、不明3例となっています。93例のうち、2011年以降の症例が68例で、本感染症の認知度の高まりや検査法の進歩によって確認される症例数が増えていると考えられます。しかしながら、把握されていない患者も多く存在していると推測されています。

冒頭の写真は琉球ゴールデンキングス。

下の写真は血液培養から検出されたCapnocytophaga canimorsus

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