
書籍を紹介します。ジェローム・グループマン著、美沢惠子訳「医者は現場でどう考えるか」石風社、こちら。Amazon, こちら。
著者のジェローム・グループマンJerome Groopman, M. D.の略歴です。
ジェローム・グループマンは、1952年に生まれる。ハーバード大学医学部教授(Dina and Raphael Recanati Professor)兼、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの生物医学などの実験的医学主任を務めた。がん、血液疾患、エイズ治療の第一人者である。「ニューヨーカー」誌で医学・生物学分野のスタッフライターをつとめ、また「ニューヨーク・タイムズ」紙や「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙などの新聞や多くの科学雑誌に寄稿した。日本で刊行された著書に『毎日が贈りもの』、『セカンド・オピニオン』がある。
訳者の美沢惠子は、1946年東京に生まれる。小学校時代をニューヨークで過ごす。国際基督教大学卒。国際化学療法学会、国際移植学会、アレルギー・免疫学会、小児科学会、救急医療学会、看護学会、国際労働機関、国連人口基金、NHKのニュース番組などの同時通訳を務め、医学論文の翻訳に従事する。
訳書に南アフルカ出身の生物学者L.ワトソン著『未知の贈りもの』(筑摩書房)、『アフリカの白い呪術師』(河出書房文庫)他がある。日本翻訳者協会会員。
本書の内容
はじめに 虚心に患者と向きあう
第1章 瞬時の判断における思考メカニズム
第2章 医師の感情と診断ミス
第3章 救急治療室での「意識的平静」
第4章 プライマリーケア医の役割
第5章 家族の愛が専門家を覆す
第6章 前例のない症例に向きあう
第7章 外科医A、B、C、Dそれぞれの〝診断〟
第8章 大量データによるミスとエラー
第9章 医療市場の怪物
第10章 病でなく人を治療する
おわりに 患者の物語を聞きとる
著者はN Engl Med Jの編集者を歴任している。
本書でテーマにしていることは「医師は患者を目の前にして、診察中、頭の中で何を考えているのか」である。本書はがんやエイズを専門とする著者が臨床現場の取材や自らの体験をもとに、医師の思考のメカニズム、医師の感情、医師が陥りがちな思考のエラーやバイアスとそれらが治療に与える影響を明らかにしている。著者は医師歴の中で、誤診症例を全て記憶しているという。「誤診は、医師の思考が見える窓」と考え、失敗談にまとめた。診断のミスは技術的な理由で起こるという思い込みは覆される。
医師の下す診断は、その場面、場面での感情に左右されることが多い。
最初に下した診断に固執する。
指示に従わない患者に嫌悪感を抱く。
「医師の患者に対する感情」はまさしく行動を左右する。
このように感情に左右されるときに、医療エラーは起こりやすい。
熟練した医師に共通することは「自分は患者のために何ができるか」「そして何ができないか」を見極めることが出来る。コミュニケーションにより医師は患者により良い医療を提供できる。
The secret of patient care is in caring for the patient.=患者さんのケア(care)の秘訣は、患者さんを思いやること(caring)である、という基本に立ち返る。
近年の医者はパソコン画面ばかり見て話を聞いてくれない、更にAIが導入されたことにより「AIが医療を解決してくれる」は真実かどうか。本書は、医師が思考のエラーから自身を守る貴重な戒めになる。
ジェローム・グループマンJerome Groopmanの紹介。
Dr. Groopman holds the Dina and Raphael Chair of Medicine at the Harvard Medical School and is chief of experimental medicine at the Beth Israel Deaconess Medical Center. His research has focused on blood development, cancer, and AIDS. Currently, his basic laboratory research involves understanding how blood and vascular cells grow, communicate, and migrate. He is also studying how viruses cause immune deficiency and cancer, the role of endocannabinoids in hematopoiesis, and liver injury from hepatitis C virus. He serves on many scientific editorial boards and has published more than 150 scientific articles. In conjunction with his spouse, Dr. Pamela Hartzband, he is a bimonthly columnist for ACP Internist, the publication of the American College of Physicians. Dr. Groopman writes regularly about biology and medicine for lay audiences. His editorials on policy issues have appeared in The New Republic, The Washington Post, and The New York Times, and he is a staff writer in medicine and biology at The New Yorker. His first popular book, The Measure of Our Days, published in 1997, explored the spiritual lives of patients with serious illness and became the basis for the ABC television series “Gideon’s Crossing.†His next book, Second Opinions, was published in 2000, and his third book, The Anatomy of Hope, was released in 2004 and was a New York Times bestseller. His most recent book, How Doctors Think, published in 2007, explores how physicians arrive at diagnoses and treatments, and how they can go wrong.
ジェローム・グループマン医師は、ハーバード大学医学部でディナ・アンド・ラファエル医学講座教授を務め、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの実験医学部長を兼任する。彼の専門領域の研究は、血液発生、がん、エイズである。現在、基礎研究室では、血液細胞と血管細胞がどのように増殖し移動するかを解明することに重点を置いている。また、ウイルスが免疫不全やがんを引き起こす仕組み、造血におけるエンドカンナビノイドの役割、C型肝炎ウイルスによる肝障害についても研究している。彼は多くの科学誌の編集委員を務め、150以上の科学論文を発表している。妻のパメラ・ハーツバンド博士と共に、米国医師会発行のACP Internist誌に隔月でコラムを執筆している。グループマン医師は、一般読者向けに生物学と医学に関する記事を定期的に執筆している。政策問題に関する彼の論説は、The New Republic、The Washington Post、The New York Timesに掲載されており、The New Yorker誌の医学・生物学担当スタッフライターでもある。
1997年に出版された彼の最初のベストセラー『The Measure of Our Days』は、重篤な病気を抱える患者の精神生活を探求したもので、ABCテレビのドラマシリーズ『Gideon’s Crossing』の原作となった。2000年には『Second Opinions』、2004年には3作目となる『The Anatomy of Hope』が出版され、ニューヨーク・タイムズのベストセラーとなった。2007年に出版された本書『How Doctors Think』では、医師がどのように診断や治療を行うのか、そしてどのように誤った判断を下す可能性があるのかを著している。

写真は北海道、網走の能取岬。紹介はこちら。
冒頭の写真は利尻富士。紹介はこちら。

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