冒頭の写真はコスモス。国営ひたち海浜公園の画像。こちら。
日本におけるHIV/AIDS患者の動向。豊島区池袋保健所 こちら。
日本における2022 年のHIV/AIDSの新規報告数は、HIV 感染者(=AIDS未発症者) 632 件、AIDS 患者 252 件で、合計 884 件であった。
HIV 感染者と AIDS 患者の年間新規報告数はいずれも近年減少傾向となっている。
2022 年の HIV 感染者年間新規報告数は、前年から 110 件減と大きく減少となった。AIDS 患者年間新規報告数は 2020 年に 4 年ぶりに前年より増加したが、翌年には再び前年より減少した。
2022 年の HIV 感染者と AIDS 患者を合わせた新規報告数に占める AIDS 患者の割合は 28.5%であった。
2022 年の保健所等における HIV 検査件数は 73,104 件(2019 年 142,260 件、2020 年 68,998 件、2021 年58,172 件)であった。2020 年に前年の半数以下に減少したが、2022 年は前年よりも増加した。
国内で 2020 年 1 月に初めて報告された新型コロナウイルス感染症の流行に伴う検査機会の減少等の影響で、無症状感染者が診断に結び付いていない可能性に留意する必要がある。HIV 感染者、AIDS 患者の早期診断、早期治療のために検査の必要性を広報し、多様な場面での検査機会の提供、および自治体での検査体制をより充実させることが求められる。
世界のHIV陽性者について。大阪健康安全基盤研究所 こちら。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)の発表によると、2018年の世界におけるHIV陽性者数は3,790万人であると推計されている。依然として東部・南部アフリカが最も多い。
一方、年間の新規HIV感染者数は1997年の290万人をピークに減少し、2018年は170万人と推定されている。未だ新規感染者の増加が続いている東欧・中央アジアなど一部の地域を除いて、ほぼ世界全体で減少傾向が見られるが、特に陽性者が多い東部・南部アフリカでは新規感染者の減少が顕著となっています。
世界全体ではHIV陽性者の約半数を女性が占めており、男女間での感染が主流である。
2018年の新規感染者のうち、男性同性間の性的接触による感染は17%にとどまる。
一方、日本においては流行形態が大きく異なり、陽性者の90%以上が男性で、男性同性間での性的接触による感染が中心である。
HIV患者の早期発見に向けて HIV検査相談マップ こちら。
HIV陽性者をより早い時期から見つけるために、HIVが増殖しはじめた時点でウイルス遺伝子を調べる「核酸増幅検査(NAT検査)」やHIVを形作るタンパク質を調べる「抗原検査」、抗体と抗原が同時に測定できる「抗原抗体同時検査」がある。
HIV検査は、最初に「スクリーニング検査」を行い、そこで陰性であれば「HIV検査陰性」となる。
陽性者は引き続いて「確認検査」を実施する。スクリーニング検査は0.1~1%の割合で「偽陽性」が存在するため必ず確認検査へ移行する。確認検査で陽性であれば「HIV感染陽性」、陰性であれは「HIV検査陰性(スクリーニング検査の偽陽性)」となる。
スクリーニング検査の陽性には、HIV感染による「真の陽性」と、HIVに感染していないのにも関わらず、非特異反応により陽性となる「偽陽性」も含まれているため、確認検査は必ず行わなければならない。
検査室におけるHIV感染診断法をめぐるトピック
(IASR Vol. 37 p.173-174: 2016年9月号) こちら。
2008年に日本エイズ学会・日本臨床検査医学会により「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2008」が公表された。
このガイドラインに示されている通り, 検査室におけるHIV検査はスクリーニング検査法と確認検査法からなる。
スクリーニング法
スクリーニング検査法にはイムノクロマト(IC)法, 粒子凝集(PA)法, 酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法, 化学発光酵素免疫測定(CLIA)法があり, 0.1~0.3%程度の偽陽性が発生するが偽陰性を出さない(真の感染者を見落とさない)ように開発されている=できるだけ幅広く陽性者を見逃さないのが目的。
確認検査法
確認検査法には, より特異性が高いウェスタンブロット(WB)法が用いられる。抗HIV-1抗体検出用, 抗HIV-2抗体検出用のものがそれぞれ市販されている。
近年新たに発売されたほとんどすべてのスクリーニング検査用診断薬は, 抗HIV-1/2抗体とHIV-1 p24抗原を同時に検出でき, セロコンバージョン前の感染急性期をも検出可能な第4世代検出試薬と呼ばれるものである。スクリーニング検査法として最も推奨される診断薬であるが, コストの問題から, 抗HIV-1/2抗体検出試薬のPA法が選択される場合もある。
IC法は操作が簡便で特別な反応・測定装置が必要なく, かつ個包装で室温での保管が可能なことから, 保健所やエイズ啓発イベント会場等で行われる即日検査に用いられ, HIV検査の普及啓発に大きく貢献している。現在検査薬として市販されているエスプラインHIV Ag/Ab(富士レビオ社), ダイナスクリーン・HIV Combo(アリーアメディカル社)はいずれも抗HIV-1/2抗体とHIV-1 p24抗原を同時に検出できる試薬である。
先に述べたように, スクリーニング検査陽性検体の中には一定の割合で偽陽性検体が含まれているが, スクリーニング検査陽性または判定保留となった検体に対し, 異なるキットを用いた追加スクリーニング検査を行うことで偽陽性の割合を減らすことができる。さらに真の陽性例を確定診断するため確認検査を行う必要がある。しかしながら, ここ20年以上にわたって新たな確認検査用試薬はわが国の市場に導入されておらず, この10数年間のスクリーニング検査試薬の技術の進歩により, 「スクリーニング検査陽性, 確認検査(WB法)判定保留または陰性」となる検体が増えている。→後述の如く、WB法は
さらに愛知県における5例のHIV-2感染例2,3)の報告を受けて発出された通知4)によりHIV-2感染例を念頭においた検査体制が取られるようになって以降, 当所においてHIV-1とHIV-2の交差反応による鑑別困難例の相談を受ける機会も増えている。
HIV感染急性期はその後の無症候期と比べて血中ウイルス量が多く他人を感染させるリスクが高いため, その時期の検出は重要である。
感染急性期で抗体価が低いためにWB法陰性となった場合には, 核酸増幅検査(NAT)の使用が有効である。スクリーニング検査陽性, WB法判定保留または陰性でNAT陽性となった場合, HIV-1感染急性期であることが強く疑われる。一方で, NATはコンタミネーションによる偽陽性の可能性を考慮する必要があり, 現在製造販売承認を受けている核酸増幅検査試薬は薬事上「定量(測定)」試薬としての承認であり「定性(検出)」試薬としての承認ではないことからも, このようなケースでは, 3~4週間後にあらためて検査を行い, WB法陽性を確認する。
HIV検査(スクリーニングおよび確認検査)の変更
2014年7月に, 米国CDCが推奨するHIV検査アルゴリズムが大幅に変更された。
- スクリーニング検査法として第4世代試薬の使用が明記された
- これまでわが国と同様に確認検査法として使われてきたWB法に変わり「抗HIV-1/2抗体鑑別系試薬による検査」と, この方法で「HIV-1/2ともに陰性」または「HIV-1判定保留HIV-2陰性」であった場合に「HIV-1核酸増幅検出系試薬を用いた検査」を行うよう推奨している。
スクリーニング検査法の比較 国立感染症研究所 後天性免疫不全症候群(エイズ)/HIV 感染症病原体検出マニュアル こちら。
スクリーニング検査試薬は第1世代から現在の第4世代まで改良が進んでいる。
第1世代・第2世代試薬は、特異抗体の検出には酵素標識抗ヒト IgG が用いられ、抗原は第一世代ではウイルスが、第二世代では組換え抗原が用いられた。
第3世代は、特異抗体の検出に酵素標識 HIV 抗原を用いる抗体検出試薬で、洗浄後に残存した非特異的ヒトIgG の検出によるバックグラウンドが低下したことと、IgG だけでなく IgM も検出できるようになったことで、正確性と感染初期の検出感度が飛躍的に高まった。
第4世代は、第3世代の試薬に HIV-1 p24 抗原の検出能を加えたもので、セロコンバージョン前の
ウイルス血症の時期も検出が可能となった。
写真は杉沢の沢スギ・沢スギ自然館。こちら。
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